こんな方に向けての記事です。
- 新しい環境で働き始めたばかりのため、派遣労働に関する知識が乏しい人
- 客先常駐をしていて、多重派遣のリスクや問題点について関心がある人
- 派遣労働に興味を持っており、多重派遣についての情報を知りたい人
多重派遣はIT業界で時折話題になる問題です。
SNSでも「多重派遣は普通にある」、「いやいやそんなことはない」といった議論が巻き起こることがあります。
今回は、そんな多重派遣について、初心者でもわかるように詳しく解説します。
IT業界に居る限り避けづらい問題ですね。
多重派遣とは?
多重派遣の基本
多重派遣とは、労働者が本来所属している会社からさらに別の会社に派遣されることを指します。
このような状態は法律的に問題があり、労働者の権利が守られないことが多いです。
多重派遣の問題点を理解するために、まずは基本的な労働契約について知っておきましょう。
労働契約の種類
労働契約には大きく分けて「派遣契約」と「準委任契約(受託契約)」があります。
派遣契約では、労働者が派遣元から派遣先の指揮命令を受けて働きます。
準委任契約では、労働者が一定の業務を独立して遂行します。
どのようにして多重派遣が発生するのか?
多重派遣が発生する原因は複数あります。 主な要因としては以下のようなものが挙げられます。
- 人手不足:特定のスキルを持った労働者が不足している場合、企業は急場しのぎで多重派遣に頼ることがあります。
- コスト削減:企業が直接雇用よりも派遣労働の方がコストを抑えられると考え、多重派遣に走るケースがあります。
- 契約の曖昧さ:労働契約が明確でない場合、どの企業が実際に労働者に対して指揮命令を行うかが曖昧になり、多重派遣の温床になります。
例えば、IT業界ではプロジェクトの規模や専門性の高さから、
一人の労働者が複数の企業のプロジェクトに関与することが求められることがあります。
この結果、労働者が直接の雇用主以外の企業からも指示を受けることになり、多重派遣の状態が発生します。
多重派遣の問題点
多重派遣には多くの問題点があります。主な問題点は以下の通りです。
- 労働環境の悪化:複数の企業から指示を受けることで、労働者の業務負担が増加し、労働環境が悪化します。
- 労働者の権利侵害:多重派遣は労働基準法や派遣法に違反することが多く、労働者の権利が侵害されるリスクがあります。
- 法的リスク:多重派遣を行う企業は、労働基準監督署から指導を受けたり、罰則を受ける可能性があります。
特に、労働者がどの企業の指揮命令を受けるべきかが曖昧になると、業務内容や責任が不明確になり、
労働者自身のキャリアにも悪影響を及ぼします。
また、適切な労働条件が保証されないことで、労働者のモチベーションや生産性も低下します。
「無い」という人の主張
一般的なIT業界の構造
IT業界では多重派遣は「原則、無い」とされています。
具体的には、以下のような契約形態が一般的です。
- 顧客がリーダーとして準委任契約を結び、直接管理するケース
- これは違法であり、「偽装請負」と呼ばれます。
- 違法であるため、通常は避けられるべきです。
- 派遣契約の多層構造
- 派遣契約では、労働者が多層構造で派遣されることは法律で禁止されています。
SIer業界の取り組み
SIer(システムインテグレーター)業界では、2005年前後に偽装請負問題に対して徹底した指導が行われました。
現在では、以下のようなルールが一般化しています。
- 再委託回数の制限(階層が深い再委託はNGです)
- 社員を含まない再委託(丸投げ)NG
- 一人請負(準委任も)NG
これにより、プロジェクトの構造は非常に明確で、違法な多重派遣は発生しにくくなっています。
「無い」という人の例外パターン
特殊なケース
しかし、IT業界の中でも多重派遣が発生しやすいケースも存在します。
例えば、以下のような場合です。
- 調達難易度が高すぎる
- 特定の技術(例えばSAP)の専門家が不足している場合。
- チーム戦規模ではない依頼
- PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)やインフラ関連の小規模プロジェクト。
- 不人気過ぎて人が集まらない
- 遠方の常駐や、プロジェクトが炎上している場合。
違法状態を避けるために
これらのケースでも、違法状態に陥らないようにすることが重要です。
具体的には、以下のようなポイントに注意が必要です。
- 単独の準委任作業者をアサインする場合
- この場合、直接指揮命令を行わないことが重要です。
- 自律的に業務を遂行できる専門性が求められる
- ロースキルのSES(システムエンジニアリングサービス)要員を1名だけ派遣するのはリスクが高いです。
「ある」という人の主張
多重派遣が発生しやすい環境
多重派遣が発生しやすいのは、非SIerの商流や特定の企業文化が影響する場合です。
例えば、大手メーカーやゲームパブリッシャーなどでは、派遣契約以外を受け入れない商流もあります。
発注者と受注者の条件
多重派遣が発生するためには、発注者と受注者の双方に特定の条件が揃う必要があります。
発注者
- 非SIerの商流であること。
- 外注人員を社員のように使いたいというスタンスの企業。
受注者
- SES会社で営業力が不足している場合。
- ロースキルのSES派遣が主力である会社。
改善策
多重派遣の問題を解決するためには、転職という選択肢が考えられます。
こういった企業間の問題を個人で解決することは非常に難しいためです。
私の場合は、客先常駐として働いていましたが、そういった働き方に疲れてしまい、社内SEへと転職しました。
社内SEになれば、多重派遣や客先常駐と無縁な生活が送れるのでその点ではおすすめです。
社内SEになりたいと考えている方は、以下の記事も参考にしてみてください。
まとめ
多重派遣の問題は、法律的な側面だけでなく、労働環境や企業文化にも深く関わっています。
SIer業界では徹底した管理が行われていますが、特定の条件下では多重派遣が発生することもあります。
労働者としては、違法状態を避けるために自分のスキルを高め、適切な契約形態を選ぶことが重要です。
以上の情報を踏まえて、自分のキャリアを見直し、多重派遣の問題を回避するための対策を講じましょう。
きちんとした知識を持って自分のキャリアを考えましょう。
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