はじめに
SES(システムエンジニアリングサービス)契約で突然「退場」を告げられるケースが増加しています。
契約途中での退場は、エンジニアの収入やキャリアに大きな影響を与えるだけでなく、精神的なダメージも少なくありません。
本記事では、SES契約における突然の退場通告の原因、退場時の法的権利、適切な対応方法、そして同様の事態を未然に防ぐための対策を詳しく解説します。突然の退場トラブルから身を守るための知識を身につけましょう。

突然退場を告げられるのはつらいですよね。
SES契約における「退場」とは何か


SES契約の基本構造と特徴
SES契約とは、エンジニアが所属する企業(SES企業)とクライアント企業の間で締結される契約形態です。
一般的には「○○さんを月額○○万円で△ヶ月間提供する」といった人材提供型の契約になります。
この契約形態の特徴は、成果物ではなく「人」を提供する点にあります。
エンジニア自身はクライアント企業との直接の契約関係はなく、あくまでSES企業の社員としてクライアント先に常駐します。
このため、契約の詳細条件を知らされていないケースも少なくありません。
「退場」の定義と一般的なプロセス
SES契約における「退場」とは、クライアント企業から「この人材はもう必要ない」と判断され、常駐先から引き上げることを意味します。正式には「契約解除」ではなく「要員交代」や「アサイン変更」と表現されることもあります。
一般的なプロセスとしては、以下のような流れになります:
- クライアント企業からSES企業への退場要請
- SES企業から該当エンジニアへの通知
- 引き継ぎ期間の設定(ある場合)
- 退場日の確定
- 次の配属先の調整
しかし、実際には「明日から来なくていい」といった突然の通告や、理由が明確に説明されないケースも多々あります。
契約上の「退場」と実態のギャップ
理想的なSES契約では、正当な理由なく突然エンジニアを退場させることはできないはずです。しかし、実態としては以下のようなギャップが存在します:
- 契約書に「クライアントの判断で即時退場可能」といった条項が含まれている
- 口頭での契約変更や「暗黙の了解」が横行している
- 「試用期間」といった名目で簡単に退場させる仕組みがある
- 退場理由が具体的に開示されないことが多い
退場事例の増加傾向と業界の現状
IT業界、特にSES市場では近年、以下のような傾向が見られます:
- 短期契約・短期プロジェクトの増加
- クライアント企業のコスト削減圧力の高まり
- スキル要求の高度化・細分化
- 景気変動によるIT投資の波
厚生労働省の統計によれば、IT業界における契約途中解除は2020年以降増加傾向にあり、特にSES契約では他の雇用形態と比較して約1.5倍の発生率とされています(※架空の統計)。
よくある退場理由とその背景


スキルミスマッチ・期待値とのギャップ
最も多い退場理由の一つが「スキルミスマッチ」です。これには以下のようなケースがあります:
- スキルシートと実際の能力のギャップ:SES企業が営業優先でスキルを過大評価して提案
- 技術スタックの不一致:「Java経験者」というだけで特定のフレームワーク経験を期待される
- 期待レベルの不明確さ:「中級者レベル」といった曖昧な表現による認識の違い
- 自己申告スキルの検証不足:面談で深堀りされず、実務開始後に問題発覚
実際の事例:Aさん(35歳)は「Java開発5年」の経験をアピールして参画したが、クライアントの想定していたのは「Spring Bootでのマイクロサービス開発経験」で、従来のモノリシック開発しか経験のなかったAさんは1ヶ月で退場となった。
コミュニケーション不足・人間関係トラブル
技術的なスキルが十分でも、以下のようなコミュニケーション問題で退場となるケースも多発しています:
- 報告・連絡・相談の不足:進捗状況や問題の共有が不十分
- チーム文化への不適応:既存チームの慣習や暗黙のルールに馴染めない
- クライアント側キーパーソンとの相性問題:直接の上司や先輩社員との関係悪化
- コミュニケーションスタイルの違い:質問の仕方、会議での発言方法など
実際の事例:Bさん(28歳)は技術力は高く評価されていたが、問題に直面した際に一人で解決しようとして報告が遅れ、結果的にプロジェクト遅延の一因となり退場となった。
プロジェクト予算削減・方針転換
エンジニア個人の能力や態度とは無関係に、以下のような外部要因で退場となるケースも少なくありません:
- 予算削減による人員整理:特に四半期末や年度末に多い
- プロジェクト方針の転換:別の技術スタックへの移行決定
- 開発フェーズの終了:設計フェーズから実装フェーズへの移行時など
- プロジェクト自体の中止・凍結:上位決定による突然の方針変更
実際の事例:Cさんのチームは6名のSESエンジニアで構成されていたが、クライアント企業の四半期決算が芳しくなく、突然のコスト削減指示により外部リソース半減が決定。スキルや実績に関係なく3名が退場となった。
クライアント企業の内部事情
表面上は明かされない、クライアント企業内部の事情による退場も多いです:
- 社内政治や部署間対立:IT部門と事業部門の対立など
- 予算の部署間移動:急な予算配分変更
- 内製化方針への転換:外部リソース削減の全社方針
- 人事異動による方針変更:プロジェクトオーナーの交代
実際の事例:Dさんは参画3ヶ月目に突然退場を告げられた。後に分かった真相は、クライアント企業がIT部門の内製化方針を決定し、外部リソースを全体的に削減する社内決定があったためだった。
パフォーマンス評価の問題
実際の業務パフォーマンスに関連する退場理由としては:
- 納期遵守の問題:担当タスクの遅延
- 品質の問題:バグの多発やコードレビュー指摘の多さ
- 業務知識の習得速度:業界・業務知識の習得に時間がかかる
- 主体性の欠如:指示待ち姿勢が強い
実際の事例:Eさんは技術力は問題なかったが、金融系プロジェクトでの業務知識習得に時間がかかり、クライアント企業の想定よりも自走できるようになるまでの期間が長いと判断され、3ヶ月で退場となった。
突然の退場通告時の対応ステップ


冷静に状況を把握する方法
突然の退場通告は大きなショックです。まずは冷静さを保ち、以下のステップで状況を整理しましょう:
- 退場通告の正式な経路を確認する
- 直接クライアントから告げられた場合は、自社の上長にも確認
- メールなど記録に残る形で通知内容を残してもらう
- 退場の時期と条件を明確にする
- 正確な退場日
- 引き継ぎ期間の有無
- 退場までの業務内容
- 感情的な反応を避ける
- その場での反論や弁明は避け、「詳細を確認させてください」と伝える
- 個人的な感情は同僚や友人に相談し、業務の場では冷静さを保つ
冷静な対応例:「ご判断については理解しました。円滑な引き継ぎと今後のために、具体的な退場理由と期日について詳しく教えていただけますか?」
退場理由の明確化を求める交渉術
退場理由を明確に把握することは、今後のキャリア改善に不可欠です:
- 具体的な事実関係を質問する
- 「いつ」「どのような場面で」問題があったのか
- 「どのような点が」期待と異なっていたのか
- 感情的表現ではなく具体的な事例を求める
- 「コミュニケーションが悪い」ではなく「どのような状況でコミュニケーション不足があったか」
- 「スキル不足」ではなく「どのスキルが具体的に足りなかったか」
- 第三者を交えた面談を提案する
- 自社の上長や人事担当者も含めた面談を提案
- 「今後のキャリア形成のため」という前向きな理由を伝える
交渉例:「スキル面での課題があるとのことですが、具体的にどの技術や知識が不足していたのでしょうか?今後の学習計画に活かしたいと思います。」
所属SES企業との適切なコミュニケーション
退場が確定的な場合、所属企業との連携が重要です:
- 速やかな報告と情報共有
- 退場通告を受けた経緯と内容を詳細に報告
- クライアントから聞いた退場理由をそのまま伝える
- 自分なりの分析や見解も率直に共有
- 次の配属についての協議
- 希望する技術領域や業界
- 勤務地や条件の希望
- スキルアップの意向
- 給与保証や待機期間の確認
- 次の案件が決まるまでの給与保証の有無
- 待機中の業務内容や出社要否
コミュニケーション例:「今回の件を踏まえ、私自身のスキルアップも必要だと考えています。次の案件までの間にJava関連の資格取得を目指したいと考えていますが、会社としてのサポートは可能でしょうか?」
退場時の引き継ぎ対応のベストプラクティス
プロフェッショナルとしての評判を維持するため、退場時も以下のような丁寧な引き継ぎを心がけましょう:
- 体系的な引き継ぎ資料の作成
- 担当業務の全体像と進捗状況
- 未解決の課題と対応中の事項
- 関連ドキュメントや参考資料のリスト
- コードや成果物の整理
- コメントの追加や整理
- ローカル環境でのみ保持している情報の共有
- 使用中のアカウントやアクセス権の整理
- 円滑なコミュニケーション維持
- 感情的にならず、冷静かつ丁寧な対応
- 後任者への直接的な引き継ぎの申し出
- 退場後も質問対応可能な連絡先の共有(適切な範囲で)
引き継ぎ例:「担当していた機能の概要と進捗状況をドキュメント化しました。特に●●の部分は要注意点として赤字でマークしています。引き継ぎ後も質問があれば、1週間程度はメールで対応可能です。」
次の配属先確保のための行動計画
退場が決まった時点で、次の一手を考えましょう:
- 自己分析と市場価値の再評価
- 自分のスキルセットの棚卸し
- 市場で求められているスキルとのギャップ分析
- 短期間で習得可能なスキルの特定
- 所属企業内での可能性
- 社内での別案件の可能性
- 研修や自己啓発期間の交渉
- 配属先の業種・業界の希望を明確に
- 外部機会の探索準備
- 履歴書・職務経歴書の更新
- ポートフォリオの整理
- 転職サイトやエージェントへの登録準備
行動計画例:「今回の退場を受け、React.jsのスキルを強化する2週間の学習計画を立てました。並行して社内の別案件も探していただきたいのですが、できればWeb系の案件を希望します。」
退場時に知っておくべき法的権利と保護


SES契約における法的保護とグレーゾーン
SES契約では、エンジニア自身の権利が見えにくい構造がありますが、以下のような法的保護は存在します:
- 労働契約法による保護
- 雇用契約は継続:退場≠解雇
- 給与支払い義務は継続:仕事がなくても基本給は保証される
- 休業手当の可能性:会社都合の待機は休業手当(60%以上)対象
- グレーゾーンとなる慣行
- 「案件がなければ給与減額」は違法の可能性
- 「退場したら即解雇」は不当解雇の可能性
- 「自己都合退職に誘導」は脅迫にあたる可能性
法的知識例:「労働契約法第16条により、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は無効とされています。SES契約での退場は解雇理由として直接的には認められない可能性が高いです。」
労働契約法上の不当な退場への対抗手段
不当な扱いを受けた場合の対抗手段を知っておきましょう:
- 基本的な対抗手段
- 労働条件通知書や雇用契約書の確認
- 就業規則の確認と照合
- 会社との交渉(人事部や上長との面談)
- 社外の相談先
- 労働基準監督署への相談
- 労働組合への相談(加入している場合)
- 労働問題専門の弁護士への相談
- 証拠の保全
- メールやチャットのログ保存
- 口頭指示は可能な限りメールで確認
- 面談内容のメモ作成
対抗手段例:「退場に伴う待機期間中の給与減額について、労働契約や就業規則に明記がない場合は、労働基準監督署に相談することも選択肢の一つです。」
給与保証に関する権利と交渉ポイント
給与に関する権利を守るための知識と交渉術:
- 基本的な権利
- 雇用契約で定められた基本給の保証
- 会社都合の待機時の休業手当(平均賃金の60%以上)
- 残業代、交通費などの諸手当の適正支払い
- 交渉のポイント
- 「案件がないから給与ゼロ」は法的に無効
- 「退場=懲戒」という扱いは不当
- 減給する場合は労働契約の変更が必要
- 給与保証の期間と条件
- 次の案件が決まるまでの給与保証期間
- 待機中の業務内容や自己研鑽の扱い
- 在宅勤務や出社の要否
交渉例:「退場後の待機期間については、労働基準法第26条に基づく休業手当の支給対象となりますので、基本給の60%以上の保証をお願いします。」
相談・支援を受けられる公的機関や団体
困ったときに頼れる外部リソース:
- 公的機関
- 労働基準監督署(各都道府県に設置)
- 総合労働相談コーナー(無料相談可)
- 法テラス(法律相談、収入に応じた援助制度あり)
- 民間団体
- 労働組合(業界別、地域別)
- NPO法人「POSSE」などの労働相談窓口
- エンジニア向けのコミュニティや勉強会
- 情報リソース
- 厚生労働省「モデル就業規則」
- 「IT技術者のための労働相談Q&A」(仮)
- 各種法律相談サイトのQ&A
相談先例:「東京都の場合、『東京都労働相談情報センター』で無料の労働相談を受けることができます。電話相談と面談相談があり、労働問題の専門家が対応してくれます。」
弁護士相談のタイミングと費用対効果
法的手段を検討する際の判断基準:
- 弁護士相談を検討すべき状況
- 不当解雇や強制退職の圧力
- 給与未払いや大幅な減額
- ハラスメントなど精神的被害
- 契約違反や法令違反の疑い
- 費用と効果
- 初回相談:5,000円〜10,000円程度
- 内容証明作成:20,000円〜50,000円程度
- 交渉代行:100,000円〜
- 訴訟:300,000円〜
- 弁護士選びのポイント
- IT業界・労働問題の専門性
- 相談しやすさと対応の迅速さ
- 費用体系の明確さ
弁護士相談例:「退職勧奨が執拗で精神的苦痛がある場合や、契約と異なる給与計算が続いている場合は、労働問題に詳しい弁護士への相談を検討する価値があります。初回相談料は5,000円程度からで、問題解決の方向性を示してもらえます。」
退場後の再就職とキャリア回復戦略


次の案件獲得までの空白期間の有効活用法
待機期間をキャリアアップに活用する方法:
- スキルアップ計画
- 退場理由を踏まえたスキル強化
- 市場ニーズの高いスキルの習得
- 体系的な学習計画の策定
- 自己啓発リソース
- オンライン学習サイト(Udemy、Progate等)
- 技術書籍や公式ドキュメントの精読
- ハンズオン形式のチュートリアル
- アウトプット活動
- 個人開発プロジェクト
- 技術ブログの執筆
- OSS(オープンソース)への貢献
有効活用例:「退場後の2週間を活用し、AWS認定ソリューションアーキテクトの資格取得に集中。その後の面談で、クラウド環境構築経験をアピールできた。」
スキルアップで市場価値を高める具体的方法
効果的なスキルアップ戦略:
- 市場価値の高いスキル
- クラウド技術(AWS、Azure、GCP)
- コンテナ技術(Docker、Kubernetes)
- CI/CD(Jenkins、GitHub Actions)
- 自動テスト・品質保証
- 資格取得の効果
- AWS認定資格
- Oracle認定Java資格
- PMPなどのマネジメント系資格
- LPIC(Linux)
- 実務経験の代替となる活動
- オープンソースプロジェクトへの参加
- ハッカソンやコンテストへの参加
- 勉強会やコミュニティでの発表
スキルアップ例:「退場後の1ヶ月間で、GitHubに自作のReactプロジェクトを5つ公開し、技術ブログで解説記事を投稿。その実績が次の案件獲得の決め手となった。」
SES以外の働き方への転換オプション
働き方の多様化を検討する選択肢:
- 雇用形態の変更
- 自社開発企業への転職
- フリーランスエンジニア
- スタートアップ参画
- 副業・複業型のキャリア
- 職種の横展開
- プロジェクトマネージャー
- スクラムマスター
- テクニカルサポート
- 技術営業
- リモートワーク中心の働き方
- リモートOKの企業への転職
- 海外企業の日本拠点
- 地方拠点での勤務
転換例:「SESでのJava開発経験を活かし、EdTechスタートアップのバックエンドエンジニアとして転職。常駐なしのフルリモートワークとなり、通勤時間がなくなった分、スキルアップに時間を使えるようになった。」
退場歴をポジティブに説明するための面接テクニック
退場経験を前向きに伝える方法:
- 退場を成長の機会として説明
- 学んだこと、気づいたこと
- 改善のために取り組んだこと
- 結果として得られた成長
- 具体的な改善行動を示す
- スキルアップの取り組み
- コミュニケーション改善策
- マインドセットの変化
- 自己分析と振り返りの深さをアピール
- 客観的な状況分析
- 複数の視点からの考察
- 再発防止のための具体策
面接テクニック例:「前案件では技術スタックの変更に適応できず退場となりましたが、この経験から技術トレンドへの感度を高める重要性を学びました。退場後すぐにReactとTypeScriptの学習を開始し、現在ではミドルプロジェクトを一人で開発できるレベルまで成長しました。」
キャリアの方向転換を検討するタイミング
キャリア再考のタイミングと方法:
- 方向転換を検討すべき状況
- 複数回の類似理由での退場
- 技術トレンドとのミスマッチ感
- モチベーションの低下
- ワークライフバランスの希望
- キャリアの棚卸し
- 強み・弱みの分析
- 本当に好きな仕事の要素
- 譲れない条件と優先順位
- 段階的な移行計画
- 副業からのスタート
- 関連分野への橋渡し的ポジション
- 新しいスキルセットの段階的構築
キャリア転換例:「フロントエンド開発での退場を3回経験した後、自分の強みを分析した結果、UIデザインへの興味と才能に気づき、UIデザイナーへの転身を決意。退場後6ヶ月かけてポートフォリオを作成し、デザイン会社への転職に成功した。」
退場リスクを事前に防ぐための対策


契約前の案件・クライアント企業調査法
リスクを事前に察知する方法:
- 案件情報の深堀り
- 具体的な業務内容と求められるスキル
- プロジェクト規模と期間
- チーム構成と役割分担
- 過去の類似案件の実績
- クライアント企業の調査
- 口コミサイトでの評判
- SES企業との取引実績
- 業界内での評判
- 経営状況や業績
- 具体的な質問例
- 「直近で退場となったエンジニアはいますか?」
- 「評価基準や期待値はどのように設定されていますか?」
- 「チーム内でのコミュニケーション方法は?」
- 「プロジェクトの長期的な見通しはどうですか?」
調査例:「案件の面談前に、同じクライアント企業に参画経験のある先輩エンジニアに話を聞いたところ、ドキュメント作成が多く求められることが分かった。事前に技術文書作成の練習をしておいたことで、参画後もスムーズに業務を進められた。」
スキルシート作成時の注意点と誇張の危険性
正確なスキル表現のポイント:
- 誠実な自己表現
- 実務経験年数の正確な記載
- 経験プロジェクトの規模・役割の適切な表現
- 実際に使用した技術の明確な区分
- 避けるべき表現
- 「〇〇に詳しい」などの曖昧な表現
- 「経験あり」だけで深さを示さない記述
- チーム成果を個人成果のように表現
- 一度触れただけの技術を「実務経験あり」と記載
- 現実的なスキルレベル表現
- 「経験あり」の代わりに具体的な実績や成果
- スキルレベルを数値化する場合の客観的基準
- 「未経験だが学習中」など誠実な表現
スキルシート例:「『Java開発5年』ではなく『Spring Framework使用のWebアプリケーション開発3年、バッチ処理開発2年、チームリーダー経験1年』というように具体的に記載。面談時にも誇張せず、未経験領域は『学習意欲がある』と伝えた。」
日々のコミュニケーションで信頼関係を構築する方法
退場リスクを下げる日常的な取り組み:
- 報告・連絡・相談の徹底
- 朝会・夕会での明確な報告
- 問題発生時の速やかな相談
- 進捗状況の可視化と共有
- チーム内での関係構築
- チームイベントや昼食への積極的参加
- 他メンバーへの適切なサポート提供
- 知識共有への貢献
- 価値提供の姿勢
- クライアントの業務理解への努力
- 要求以上の価値提供を心がける
- 改善提案の積極的な実施
コミュニケーション例:「毎朝のスタンドアップミーティングでは、単に『問題なく進んでいます』ではなく、『〇〇の機能開発が70%完了、明日までに完成予定。懸念点として△△があるが、××の方法で対処中』というように具体的に報告していた。結果として、クライアント側からも『状況が見えるエンジニア』として評価された。」
定期的な上長・クライアントとのフィードバック機会の確保
評価のミスマッチを防ぐ方法:
- 定期的な1on1ミーティングの設定
- 最低でも月1回のフィードバック面談
- 「今の業務で改善すべき点はありますか?」という質問
- 期待値の確認と自己評価の擦り合わせ
- フィードバックの文書化
- 面談内容のメモ作成
- 合意事項や改善点のメール確認
- 進捗の可視化と共有
- 自己評価の定期的な実施
- 成果と課題の自己分析
- 次期目標の明確化
- キャリアプランの共有
フィードバック例:「月に一度、クライアント企業の直属上司と30分の1on1を設定。『先月から改善できた点』『今月気づいた課題』『来月の目標』を事前にまとめて臨み、面談後は議事録をメールで送付していた。この習慣により、退場リスクの早期発見と対策ができた。」
複数の収入源を持つリスクヘッジ戦略
経済的・キャリア的安定性を高める方法:
- 副業の構築
- 技術ブログやQiita執筆
- オンラインコース制作
- 小規模な受託開発
- 技術書籍の執筆
- パッシブインカムの開発
- 技術系電子書籍の販売
- プログラミング教材の作成
- テンプレートやライブラリの有料配布
- アフィリエイト収入
- スキルの市場価値の定期確認
- 定期的な転職市場のリサーチ
- 転職エージェントとの情報交換
- 同業他社との年収比較
リスクヘッジ例:「本業のJava開発と並行して、週末にWordPressサイト構築の副業を行っていた。突然の退場時も、副業クライアントからの収入があったため経済的な不安が少なく、次の案件を焦らずに選ぶことができた。」
SESエンジニアの体験談


突然の退場を経験したエンジニアのリアルストーリー
ケース1: 30代前半・Javaエンジニア
参画3週間で退場を通告された佐藤さん(仮名)の体験談:
「大手金融機関のプロジェクトに参画したものの、『期待していたスキルレベルと違う』という理由で3週間で退場を告げられました。面談時に『Java経験5年』という情報だけが伝わり、実際に必要だった『Spring Boot+Kubernetes環境での開発経験』が明確にされていなかったことが原因でした。
退場告知は金曜日の夕方、『月曜日から来なくていい』と突然言われました。SES企業の営業担当も困惑した様子でしたが、結局は『クライアントの意向なので』と取り合ってもらえませんでした。
この経験から、案件参画前には『具体的にどのようなスキルや経験が求められているのか』を詳細に確認することの重要性を痛感しました。また、スキルシートも『Java経験5年』という曖昧な表現ではなく、フレームワークやツールのレベル感まで明記するようにしています。」
ケース2: 20代後半・インフラエンジニア
コミュニケーション不足が原因で2ヶ月で退場となった鈴木さん(仮名)の体験談:
「インフラ構築案件に参画したものの、技術的なスキルは問題なかったにも関わらず、『報告が少ない』『チームに馴染めていない』という理由で2ヶ月で退場となりました。
振り返ると、黙々と作業を進める癖があり、進捗報告が簡素だったこと、チーム内の飲み会や雑談に参加しなかったことが原因だったと思います。技術力だけでなく、『見せ方』や『伝え方』も重要だと学びました。
退場後は意識的にコミュニケーションスキルを磨き、毎日の報告を習慣化。次の案件では週次で上長との1on1を自ら提案し、早期のフィードバックを得る仕組みを作りました。結果として、現在の案件では1年以上継続して高評価をいただいています。」
退場危機を乗り越えた成功事例
ケース1: 40代・プロジェクトリーダー
退場の危機を察知し、先手を打った高橋さん(仮名)の事例:
「大規模プロジェクトのリーダーとして参画したものの、クライアント側の予算削減の動きを察知。自分を含むSESメンバー全員が退場になる可能性を感じました。
そこで、プロジェクト全体の効率化案を自主的に作成し、『SESメンバーを減らしても成果を出せる体制』を提案。結果として、チーム6名中4名が退場となる中、自分ともう1名は残留することができました。
この経験から、『自分の価値』を常に高め、可視化することの重要性を学びました。技術スキルだけでなく、『問題解決能力』や『コスト意識』をアピールできたことが残留の決め手になったと思います。」
ケース2: 30代中盤・テスト担当エンジニア
スキルアップで評価を逆転させた田中さん(仮名)の体験:
「テスト担当として参画したプロジェクトで、手動テストが主な業務でした。3ヶ月経過時点で『テスト自動化の流れに合わない』と退場を匂わされました。
危機感を持った私は、休日を使ってSeleniumやJUnitを独学。自主的にテスト自動化の仕組みを小規模から導入し始めました。最初はクライアント側も半信半疑でしたが、テスト工数が削減できる成果が見え始めると評価が一変。結果的に契約期間満了まで継続でき、次のプロジェクトではテスト自動化のリード役として参画できました。
この経験から、『市場価値のあるスキル』を常に意識し、自己投資を惜しまない姿勢が大切だと学びました。」
退場後にキャリアアップを実現した転機の活かし方
ケース1: 20代後半・SESからWeb系企業へ
SES退場をきっかけにキャリアチェンジした山田さん(仮名)の体験:
「汎用機系の案件で退場となり、その技術スタックの市場縮小を実感。このままでは将来性がないと考え、退場を『Webエンジニアへの転身チャンス』と捉えました。
待機期間を利用してPHP、JavaScript、AWSを集中的に学習。個人開発のWebサービスを作り、GitHubで公開しました。3ヶ月後、そのポートフォリオをきっかけにWeb系の自社開発企業から内定を獲得。
退場は当初大きなショックでしたが、今思えば必要な転機だったと感謝しています。年収も40%アップし、リモートワーク中心の働き方も実現できました。」
ケース2: 30代後半・SESからフリーランスへ
複数回の退場経験から独立を決意した佐々木さん(仮名)の体験:
「10年以上SESとして働く中で、3回の退場を経験しました。最後の退場をきっかけに、『誰かに評価されるのではなく、自分で価値を生み出す働き方』を模索。
次の案件を探しながら、並行してフリーランスの準備を開始。技術ブログの執筆や勉強会での登壇を通じて知名度を高め、半年後に独立しました。
現在は複数の中小企業からの直接契約で安定した収入を確保。SESより高単価で、しかも『退場』のリスクなく働けています。退場の経験があったからこそ、『自分の市場価値を高める』意識が強くなり、結果として良いキャリアチェンジができました。」
まとめ


SES契約における突然の「退場」は、適切な準備と対応がなければキャリアの大きな危機になりかねません。
しかし、本記事で解説したように、法的知識を身につけ、適切な交渉術を駆使することで、不利な条件を回避できるケースも少なくありません。
また、退場経験を前向きに捉え、スキルアップや働き方の見直しのきっかけとすることで、
むしろキャリアの転機として活かすことも可能です。
実際に、多くのエンジニアが退場をきっかけに自己研鑽に励み、より良い条件の職場や、自分に合った働き方を見つけています。
もしSESに限界を感じた場合は、転職をするのも選択肢の一つです。
私の場合は、SESとして働くことにキャリアの不安を覚え、社内SEへと転職しました。
社内SEへの転職を検討している方は、下記の記事も参考にしてください。


SES契約の退場は終わりではなく、あなたのキャリアにおける新たな始まりになり得るのです。
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